祭祀相続(お墓や仏壇、位牌)は老後のうちに考えておいた方がいい案件のひとつ。

祭祀相続

祭祀相続とはお墓や仏壇や位牌を対象とした相続を普通は指します。

祭祀相続は財産相続と違って、その一族にひとつしか存在しないものを誰がどのようにみていくかということを意味していて、単純に要る要らないでは済ませられません。
それでも財産相続のようにお金が直接絡んでこないので、軽視されがちなのも事実です。

位牌や仏壇は家を相続した人が跡を見て行くのが一般的で、それほどトラブルになるケースはありませんが、お墓はトラブルになるケースがいろいろ考えられます。

通常であれば、長男が祭祀財産を全て受け継ぐことになりますが、長男であってもほとんどのお墓は管理してるところにちゃんとした書類を揃えて名義変更をする必要があります。

必要になる書類はお墓を管理しているところによって様々。
普通なら、『前名義人の除籍謄本』と『新名義人の戸籍謄本(前名義人との関係の判るもの)』、『名義変更届書』、『実印と印鑑証明書』があれば問題ないですが、場所によっては他にも必要になる書類があるので、一度管理してるところに問い合わせるのが基本です。

長男以外が祭祀相続をすることも可能なんですが、その場合には長男や他の兄妹が認めたという書類(遺産分割協議書のようなもの)が必要になってくるケースも考えられます。

祭祀相続をきちんとしていかないと、孫や曾孫の代同士が裁判争いをするトラブルにまで発展しますが、弁護士はあまり祭祀相続について乗り気にはなってくれないケースが多いです。
なぜなら、財産相続と違って法律があいまいな点や確かな資料が少ない点、直接的に金銭がほとんど絡んでこない点が考えられます。

のちに自分が仏壇を買ったり、お墓の土地を買ったり、借りたり、お墓や納骨堂を購入することを考えれば、間接的には金銭が絡んでくるので、ちゃんとじっくり考えた方がいい問題なんですよ。

祭祀相続は、きちんとしていれば司法書士や行政書士、弁護士に頼まなくても自分でできるので、トラブルを後世に残さないようにしましょう。

法律上の祭祀相続

民法 第3章 第1節総則 第896条

・相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。

民法 第3章 第1節総則 第897条

・系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者がこれを承継する。

・前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。


この法律から考えると、「次はこの人に承継させます。」と生きてる間に決めて書類を残しておけば、祭祀相続は長男や次男、はたまた親戚なんて問題ではないということです。
極論を言えば、他人でも相続できる可能性があるんじゃないですかね。

遺言書がなくて、長男が既に亡くなっていたりすると、他の兄弟や孫が親や祖父母が入ったお墓の権利を主張しはじめる。
これが祭祀相続における争いの根源です。

主張はそれぞれにあるので、ここで強みになるのは先祖代々の仏壇の有無や、今までの墓地管理費の支払い領収書財産相続の協議書といった事実です。
主張する人や弁護士によっても材料は違ってくるので、言った言わないよりもこういった書類を残しておく必要があります。

お墓に亡くなった三男の名前を刻んであるから三男が相続してると認められるでしょと強く主張してきた弁護士がいるくらいに、人によって見解が異なるし、祭祀相続に関する知識の無い弁護士もいます。
ただ、こんなあいまいな主張をしてると恥を上塗りするだけです。